成田空港からの出発の朝、マレーシアの首都、クアラルンプール(KL)の天気予報は雨だった。レースの日も雨の予報。暑いレースを期待していた私にはがっかりな天気予報であった。KLに着くと予報どおり雨であったが、Langkawiは上がっていた。自分たちの搭乗機を降りると湿ったぬるい空気に包まれる。そうそう、こんな感じ!大きく深呼吸し、Langkawiのエネルギーを吸収する。
昨年は男女合わせてプロは20名ほどであったが、今年は、第10回大会ということもあり、このIronman Malaysiaには男女35名のプロ選手が集まった。ハワイ出場へのスロットは男女2つずつ。日本人の参加者も年々増え、地元マレーシア選手に次いで、2番目の140名近くにのぼった。私は、2002年に初めて来て以来、6回目のだが、出場予定だったのにレース約1週間前に盲腸で入院し辞退ということ、開催が危ぶまれ参加者50人程度の年、いろんな思い出が走馬灯のように廻ってきた。今年も地元選手に会えるのも同窓会の様で楽しい。
この地は、時間感覚がやはりLangkawiだ。数年前、レーススタート時刻は朝7時だった。しかし、まだ日の出前で暗いからと言って、選手は待たされた。その後、選手か、本部スタッフからかの注文で課定かではないが、2〜3年ほど前からプロが朝7時30分、エイジが7時45分のスタートに変更された。
7時30分。丁度明るくなり始めた頃のスタート。直線の1往復コースでブイも50mごとにあり、波も流れもほとんどなく泳ぎやすい。スタートして700mまでは周りに4〜5人の選手がいたが、そこから1人が抜け出した。それについて行こうとしたが、ついて行けずに離され、結局残った集団に落ち着いてしまった。1700mの折り返しで隣を泳いでいた選手が1つ手前のブイで折り返しそうになり、その間に前に出た。折り返してからは細かいうねりがあり、流れは追っているのだが泳ぎにくく感じる。数mしか差がつけられずにそのままプロ女子9位でスイムアップ。今年は例年いる「チクチク虫」が気にならなかった。
バイクコースはトランジションから大回りし約27km離れた1周37~8kmを3周半して、街を通り再びトランジッションへ戻ってくるコース。この大会は毎年のようにコースが変更され、昨年よりもアップダウンが多いコースになったように思う。
バイク2周回目の80km辺りからフロントギアの動きが悪くなり、なかなかアウターに入らない。しばらくすると‘ギー’と今まで聞いた事のない音がし始めた。そして上りでダンシング(立ちこぎ)をするとペダルが回らない。転びそうになった。自転車を降りて坂道を上りきり、下りでバイクにまたがる。ペダルを後ろに少し戻して踏み込む、スムーズではないがゆっくり回せる、そしてまたペダルが動かなくなる。このようなことを繰り返し繰り返し、4〜5kmのアップダウンを経て、ようやくバイクメカニックのテントにたどり着いた。フリーが緩んでしまってチェーンがしっかりかみ合わずに回らなくなっていたのだ。後輪を外し、閉めなおしてもらい、ギアも調節し再スタート。だいぶタイムをロスしてしまった。ここから追い上げなくてはならない。
そして3周目に入ったが、しばらくすると今度はサドルに付けているボトルとスペアタイヤがゲージの根元から折れてしまい落ちた。拾いに戻り、タイヤをくくり付け再々スタート。「あ〜もう駄目だ!」と気持ちは切れそうになったが、ここはマレーシア。最後まで何が起こるかわからない。諦めずに続ければ「きっといいことがある!」と信じ、気持ちを切り替え進む。バイクも26インチに変えたばかり、結果も勿論必要だが26インチの感触に慣れること、シーズンも始まったばかり、ここで諦めては次には繋がらない。その思いでゴールを目指す。バイクフィニッシュ時で、女子総合13位。
ランニングは5往復。ほぼフラットなL字コースで、エイドステーションは1kmごと。車道とはフェンスで仕切られていて安全だが、周回を重ねるとスポンジやペットボトルなどでエイドステーション周辺の道は埋め尽くされてしまう。テーブルには人が群がり、抜くことや給水がし難かった5往復では、すぐに折り返しが来るので前後の選手との差がはっきりわかる。1周ごとにペースを上げるように走った。エイドステーションには氷もあり、ドリンクも冷たく暑いレースには非常に嬉しい。周回を重ねるごとに前の選手に追いつくことができ、スタート時に3〜4kmぐらい先を走っていた選手にも追いつき、最終的には6名抜いて7位(日本人5名中2位)でゴール。身体が動いたと言う感覚は無かったので、ここまで追い上げられるとは思っていなかった。最後まで走りきり本当に良かった。自分の持ち味のランで粘ることができた。
レース当日の夜中に雷と大雨が降り蒸し暑くなるのを覚悟したが、思ったほど暑くも蒸しもしなかった。昨年に引き続きランカウイにしては涼しいなかでのレースだった。しかし、女子のプロで6名がリタイアをしているし、ランニングでもつぶれて歩いている選手も多かったし、全身や脚が痙攣している選手も、ゴール後車椅子で運ばれる選手も多く、やはりマレーシアはサバイバルレースなのだろうか?と思わせる。
年々エイドステーションも充実し、ボランティアの人たちの準備や手際も良くなってレースしやすい環境になってきているのだが、バイクコースの周回を終え、交通量の多い街の中を通るときには、コーンも置いていないので駐車スペースから車がバックしてきたり、原付が追い抜いてきたり、と危ない面もまだある。そして今回のコースは周回数が増えたせいで周回ミスをする選手も多かったようだ。バイクには無かったが、ランでは周回チェックのリストバンドを付ける。しかし、選手が集団で来てしまうと取れない。
他にもまだまだ改良の余地のある大会だが、緩い感じが心地よい。私にはLangkawiは非常に合っているし、大好きな大会だ。今回はハワイの権利は獲得できなかったが、有意義なレースをさせてもらえた。
応援してくださった方々、大会関係者の方々、ボランティアの方々ありがとうございました。 Malaysiaの仲間たちにもパワーをもらいました。ありがとう!
2009年シーズンが始まりました。今回は自分のミスで順位や記録を落としてしまいました。次へ活かして前進いたします。応援宜しくお願いいたします。ありがとうございました。(2009年3月12日、宮崎康子)
日時 2009年2月28日(土) 7時30分START
場所 マレーシア・ランカウイ島
天候 曇り
距離 SWIM 3.8q/BIKE 180.2q/RUN 42.2q
時間 10時間17分05秒(S 01:01:42/B 05:42:56/R 03:29:17)
順位 女子7位
男子
1位 Luke Mckenzie (AUS) 8:26:48
2位 Bryan Rhodes (NZL) 8:32:52
3位 Brian Fuller (AUS) 8:38:06
4位 西内 洋行 (JPN) 8:48:23
5位 Petr Vabrousek (CZE) 8:50:48
女子
1位 Belinda Granger (AUS) 9:21:10
2位 Nicole Leder (DEU) 9:36:40
3位 西内 真紀 (JPN) 9:57:13
4位 Dona Phelan (CAN) 10:03:18
5位 Christine Waitz (DEU) 10:05:32
6位 Ute Streiter (AUT) 10:12:51
7位 宮崎 康子 (JPN) 10:17:05 |